小さな実験はして来たが、実物を作るのは始めて。

URC第一号で、海建築家工房にとって記念碑的な家となる。

生涯で最大に緊張した現場であった。

もし事故でもあったら、人命に関わることになる。

そんなことが絶対にあってはならない。

そしてもしそうなったら、自分の建築家生命は終わるだろうと覚悟していた。

実物大実験が出来ない小さな事務所の悲しいところだ。

地下一階、地上3階の計画であった。

コンクリート打は4回試せることになる。

いきなりURCをやるのは無謀過ぎる。

最後の4回目で私が考えているURCを100%出来ればいいとした。

まず地階においては、一部だけ既存工法のラス金網の型枠を試してみることにした。

ラスの目からコンクリートが漏れないのか、コンクリートを体感したかった。

実は、URC開発者自身、コンクリート造はこの家が始めてだった。

1階においては、今度は一部だけネットを使ってみた。

2階においては、大きな面をネットでやった。

問題なく進めることが出来た。

そして3階において、全面をURCでやることが出来た。

この時の安堵感は、とても言い尽くせない。

途中で、何度も何度も ”守ってくれ” と心の中の人を空に仰ぎ見ながら祈った。

 

外断熱としたので大量のコンクリートが蓄熱材になる。

昼の太陽熱を取入れれば夜も気温が大きく下がることは無い筈だ。

(今考えると、断熱の量が少なかった。)

コンクリート造を外断熱で作れば理想的な熱環境が実現する。

南面の窓を大きく取ったが、敷地一杯に建っているので庇を充分に深くすることが出来なかった。

夏は逆に不利になってしまうので、窓の外で遮光する必要があり、URCに使用するネットを使って遮光した。

最上階には大きな水盤を設けた。

水盤には炭を入れて気化を促進させることで冷房効果を狙った。

冬にはその炭を取除き、陽光が充分に入るようにした。

水盤は、その下で断熱材で閉じるようにした。

時々に屋根に登る必要があるので出入りできるスライド式天窓を考案した。

障子が閉まる位置で落ちるようにして気密を確保している。