時期は遡るが、カリカリハウスに付いて。
この土地は国有地の競売で落したものだ。
他に入札者はいなかった。
敷地は道路から一段上がっていた。
まずは進入路から作らなければならない。
友人がユンボを持って手伝いにきてくれた。
テント暮らしが始まる。
取合えず仮小屋を作ろうと思い、基礎を作って先行足場を掛けた頃にはかなり寒い季節なっていた。
仮小屋といえども考えているうちに結構立派な小屋を作ることになってしまった。
このままテント暮らしはきつい。
仮小屋を作るための仮小屋が必要だと思い立ち、断熱材だけで作ってみることにした。
かなり暖かい筈だ。
仮小屋の仮小屋だからカリカリハウスと名前を付けた。
入口をケンドン式からドア式に変更したとき、
ドアってすごい!と生まれて始めて感じた。
骨組みはツーバイ材を使用したが、あとは断熱材だけ。
断熱材の面剛性は思いのほか高かった。
その強さを体感して、断熱材だけで何かが作れそうだ、と感じた。
それが後の「風琴庵」に繋がる。
鳥が屋根に穴をあけるので鳥除けに糸を張ったのだが、それが風で鳴る。
遠くで誰かが単調な笛を吹いているようだ。
断熱材の大きな箱だから共鳴箱にもなっているようだ。
夜は不気味で、鳴らないように糸にテープを付けたほどだ。
「風琴庵」のコンセプトは、このカリカリハウスから生まれた。