URC(fabric formwork)Architecture
URCは、RC造の海野版として命名した。
URC工法で始めて作った家が「高蓄熱URCハウス1」(1997年)である。
最大の特徴は、型枠にfabricを使っていることだ。
そのために仕上りの表情が柔らかく、既存のRC造とは全く違ったものになる。
また、fabricを使っていることでコンクリートの余剰水が自然に排出される。
そのことはコンクリートが高品質になることである。
強度も上がり、劣化も遅くなる。
もう一つの特徴は、資材の軽減化に貢献していることがあげられる。
一方で、fabricを使うことで表現が多彩にもなりうるが、
敢えてその方向へは行こうとは思っていない。
それよりも、より工法をシンプルにし、セルフビルドも可能となるようにしたいと思って開発してる。
コンクリートは熱容量が大きいので、それを外断熱でつくると室内に大変大きな熱容量が生まれる。
それは今までの住環境を変える要素となる。
畜熱型の住環境になるということで、今までの日本にはなかった考えである。
外断熱、高断熱、が主流になりつつあるが、
これからは高蓄熱が加わっていくと思われる。
URC工法は、その高断熱+外断熱を前提としている。
打放しのRC造は、熱環境に関しては全くの欠陥そのものである。
私は住宅を造ることが多かったので、RC造はかっこいいけど避けてきた。
しかし、RC造を外断熱でつくると話は全く逆になる。
これほど人に優しい熱環境はない。
そしてURC工法の開発に取り組み始めた。
阪神淡路大震災を目の当たりにしてのことだった。
自分に出来ることを考えたあげく、自分が被災者だったらどうする、と自問した結果、
丈夫で熱環境のいいものをセルフビルドで作るだろう、という思いに辿り着いた。
丈夫さでいえばやはりコンクリートだ。
コンクリートを外断熱で簡単に作れる工法はないものかと考え始めた。
しかし小さな事務所での限界がある。
実物大実験やお金のかかることは出来ない。
震災が1995年だから、2年の歳月の後にやっと実験住宅を作る機会を得た。
その後、つくるたびに改良を重ねていき、
「僥草庵」で2003年のグッドデザイン賞で入選し、
第2回あたたかな住空間デザインコンペティションで特別優秀賞を頂いた。
fabricでコンクリートを打つなど、世界中に他に誰かいるのだろうか、と思っていた。
カナダ人のMark West(University of Manitobaの教授)が私を尋ねてきた。
彼もfabricを使ってはいたが、建築の梁とか柱という部位の製作を研究していた。
私が建築自体を作っていることに強い関心を持っていたようだ。
世界に、fabricを使って試行錯誤している人が10人ほどいるらしい。
Markがその人たちを集めて会議をしたい、ということで私も呼ばれた。
しかし、本格的な建築自体を作ってしまっているのは、
今時点では、どうやら私だけらしい。
詳細はblogの「世界のfabric formwork建築」に書いた。